だれもが夢見る電気じかけの家 (コリーナ)
主人公の男の子の名前は、トミー・ナマケンボ。この名前を聞いただけで、もうクスクス笑い出してしまいます。トミーは、電気じかけの家にすんでいます。朝になると、ベッドが自動的に動きだし、トミーを着替えさせ、食事までさせてくれます。
毎朝、眠いところを起こされている子どもたちにとって、なんでもかんでもやってもらって、怒られないなんてうらやましいかぎりです。ところがある夜、大雨の影響で電線が切れてしまい、トミーの家に電気がとどかなくなったのです。ここで、子どもたちは考えます。さすがのトミーも自分で起きあがるしかないんだろうなぁと。ところが、なまけんぼうのトミーですから、眠り続けたのです。電気が通って、ベッドがトミーを起こしてくれるまでの7日間、眠り続けたのです。機械は動き出しましたが、おふろの水は冷たかったり、食事運び機には、7日分の食事がたまっていて、いっぺんにトミーの口に流し込まれたり、とさんざんなことになってしまいました。
このお話を聞いていた子どもたちは、もう大ウケです。そんなにうまくいくわけないよなぁ、と思っていたとおりにトミーがあう災難を笑ってしまうのです。はじめにどんな機械があるか、おはなしの前半で、一通り知っている聞き手の子どもたちは、それらがすべて7日分になっていたらどうなっているか、予想しながら聞いていくのです。それが見事にあたっていくわけですから、もう嬉しくて仕方がありません。クラスじゅうで、大笑いしながら終わりまで進んでいきます。特に、子どもたちに人気の場面が二つあります。
一つは、トミーの家に電気がもどり、ふたたびおふろに送りこまれた後、電気歯みがきしぼりきが、トミーの足のうらにねりはみがきをしぼりだすところです。どの子どもも、自分の足の裏をくすぐられている気持ちになるのでしょう。次々と笑い出すのです。そして、二つ目は電気食事機におくりこまれたところです。前半で、子どもたちはトミーがあさごはんにつめたいおかゆ、あついおかゆ、バナナが5本、りんご4つ、たまご6こぶんのいりたまご、ベーコン10きれ、ジャムつきトースト8まい、オレンジジュース5はい、ミルク10ぱい、ココア7はいのむことを知っています。ですから、一週間分がたまるということは、その7倍!もう、それを想像しただけでおもしろいのです、そして、想像したとおりに、トミーの口に流されるのですから。
このお話を読むのは、かけ算を学習した後の2年生3学期もしくは、3年生にしています。習ったかけ算を駆使して、このトミーの食事の量の膨大さを想像できるからです。そして、子どもにとって、想像したことが絵本の中で証明される、ということはとても大切なことです。「やっぱり、ぼくが思った通りだ!」という信頼感と安心感を本に抱きます。
また、この絵本は絵もとてもいいのです。トミーという男の子は、少し太っています。着替える場面での、おなかのふくらみぐあいのなんてちょうどいいことでしょう。それに、なまけんぼうなところ、されるがままにうごくことを少しもいとわないような表情が実によく描かれています。子どものなかには、「トミーはなまけんぼうだから、おなかが出てるんだ」と話す子もいました。すると、まわりの子も納得していました。
この本は、教室で一つの話を読んで、大笑いする時間をもつことの大事さを教えてくれます。話の先を予想できない子どもも中にはいたことと思います。それでも、友だちが大笑いしている様子につられて、笑ってしまうのです。そして、次には、なんでみんなが笑ったか自分も知りたいと思い、お話に耳をかたむけるようになってくるのです。
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