不思議なジーンズが4人の夏を結ぶ (コリーナ)
6年生に好きな本を3冊教えて、といって紙を渡し、書いてもらいました。そのときにクラスの女の子3人がこの本を書きました。本の存在は知っていたものの、中学生、高校生向きで、小学生対象ではないかなと思っていた本でした。けれでも、こんなふうに取り上げられたので、興味を持ちました。その女の子たちは、とてもなかよしなグループを組んでいるおませな女の子たちです。彼女たちが良しとする作品を読んでみたいと思ったのも正直なところです。その中でも、とくにおませな印象をもつ外岡さんに声をかけると「今度、かしてあげよっか」との答え。「貸して、貸して。」と返事すると次の日には持ってきてくれました。
もともと、誕生日の近い4人の女の子の話。お母さんたちが、妊婦のときにおかあさん教室で知り合い、いつもいっしょにすごすようになっていました。けれでも、15年もたつうちに、それぞれの家庭の事情はかわり、お母さんたちは生活に忙しくなり、それほど親しくはなくなっていきました。けれでも、この4人の女の子は、とってもなかよし。通う学校も違うけれども、夏休みはいつもいっしょに過ごしていました。
その4人が今年は違う夏を過ごすことになったのです。一人は、サッカーのサマーキャンプに行きました。一人は、離婚して離れ離れに暮らしている父親の元へ、もう一人はどこにも行かずに地元のスーパーマーケットでアルバイト、そしてもう一人はギリシャで暮らす祖父母の元へ行きました。性格もそれぞれ違う四人ですが、おたがいに相手の良いところ、悪いところもわかりあっている四人でした。はじめて、離れ離れに過ごす夏休みを前に、ニーナが古着屋で1本のジーンズを手に入れます。
それは、すごく欲しくて手に入れたというのではなく、なんとなくその場の流れで…といったものでした。ニーナ自身は、きっとはかないだろうなと心のすみで思っているように忘れかけていたものでした。
ところが、友だちの一言をきっかけにはいてみると、自分で思っていたよりずっとにあうものでした。そして、4人が順々にはいてみると、みんな体型はちがうのに、だれにもピッタリとかっこよくにあう魔法のジーンズだったのです。そこで、この4人は、このジーンズをトラベリングパンツとしたのです。4人は、夏休みに過ごすそれぞれの場所に順にこのジーンズを送る約束をしました。洗ってはいけない、一週間以内に次の人に送る、など約束も決めました。
それぞれの場で、恋をしたり、新しくできた友人を亡くしたり、父親の再婚を知ったりと様々な経験をし、心を激しく動かします。そんなときに、トラベリングパンツが届き、それをはくと勇気がわいてくるのでした。このジーンズに4人の夏の思い出が凝縮されていったのです。
読み終わって、最初に思ったことは6年生の女の子にとって、この4人の友情に自分たちを重ねているんだろうな、ということです。“これほどの深い思いを私たちも持っているよね”とこの本を貸し借りしあった女子は、確信したかったのではないだろうか、と感じました。でも、それをどうたしかめていいかわからない不安感をこの本を共有することでカバーできるのではないか、と思ったのではないでしょうか。
けれども、今の彼女たちにとっては、それぞれ離れた場でもお互いの存在があることで心が強くなるというよりは、同じ行動、同じ感情を共有することで気持ちを確かめ合っているときです。でも、それは本当の友だちになるまでまだまだ道のりのある途中経過。中学生、高校生になって、もう一度この本を読んでもらいたいなと思っています。
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