男の子の「性」を学級で考えた (たまちゃん)
性教育は日進月歩の勢いで変化しています。私が小学生だった二十数年前は、女子だけを集め、月経の説明をし、男子にはまともな性教育などされていませんでした。ところが、ここ十数年の間に、性教育の必要性は誰もが認めるところとなり、小学校一年生から系統だったカリキュラムが作成され、教師も子どもも、男女ともに、おおらかに性について学び、明るく語り合う時代となってきました。
特に変化したのは、男性の性についての学習が、両性にとって大変重要だとされてきたことです。そんな性教育の発展の中で、『おちんちんの話』(山本直英:子どもの未来社…旧版はあゆみ出版)は、男性の性を小学生にもわかりやすく説明した絵本として登場しました。
絵が大きいので授業でも使いやすいです。また、経験としては男性の性を知らない女性にも読み語りやすくなっています。それは、お父さんから息子へという親しみをこめた語り口でストーリーが進んでいるからでしょう。
また、家庭でわが子に性について伝えたい時に、最適なきっかけとなるはずです。自分の口で語るにはどう語ったらよいかわからないお父さん、お母さんも、絵本に自分の思いを重ねて語るなら、抵抗が少なくなるでしょう。なんといっても、今の親世代は、自分の親からきちんと性について教わった経験がないのですから、どう話したらよいのか、戸惑う人も多いはずです。そんなとき、この本はありがたい助っ人となるでしょう。
さて、私も4年生の子どもたちに「いのちのバトンタッチ」と名づけた性教育の授業でこの本を読み語りました。指導の流れとしては、この本を読む前に4時間の学習を経ていました。そして、4時間目の終わりに、女性の月経と同じように、男性にも射精があり、精子ができましたよというサインが送られることを話しました。
もうその日から子どもたち、特に男の子は「はやく射精のこと教えて」と言い始め、日記に「ぼくは今日、はらいたをおこしているから、しゃせいかもしれない」と不安を書いてくる子もいました。そこで、さっそく射精の授業を行い、この『おちんちんの話』を使ったのです。
読み始めた当初、ニヤニヤ笑ったり、てれかくしのために茶化したりする子も数名いましたが、しばらく続けてきた性教育を通して子どもたち自身が成長していたのか、「大事なことなんや。わろたらあかんで。」とか「ふざけてたら大人になれへんで。」などといさめる子もいて、すぐに真剣に絵本に集中し始めました。
授業の後の子どもたちの感想をいくつか紹介すると……。
「『おちんちんの話』に書いてあったけど、おちんちんをさわると本当にきもちいい。ペニスが固くなることをボッキというんだ。はじめて知った。ボッキになった時ペニスをいじったらよけい固くなった。(男子)」
「ペニスとワギナが一番大事なところだとはじめて知った。射精は男子だけなるけど、男子の中でも中学生くらいになることを知り、男子も大人になるためには大変なんだなあと思った。(女子)」
クラスの誰もが正直に素直に自分の体験や感じたことを書いてくれたので、わたしはさっそく翌日の学級通信に子どもたちの感想を載せて、みんなで読み合いました。読み合いながら、「ぼくもそうだよ」などとごく自然に自分たちの体について話し合うことができて、特に男の子は「ぼっきになったりするのはぼくだけじゃなくて、他の友達もみんななっているんだ。」ということを知り、とってもほっとしたようです。恥ずかしがらずに、明るく自分たちの体のことを話し合えた4年1組の雰囲気は本当にさわやかでした。女の子も、男の子も一緒に性について話し合い、考え合えるクラスでした。
もちろん、このような学級の雰囲気がつくることができたのは、この子どもたちが低学年から系統だったカリキュラムの性教育を受けてきていたからです。だからこそ、この子達は、性に対する抵抗や偏見が本当に少なかったのです。特に2年生のときの担任は、自分自身が妊娠し、出産に近づく真っ最中に、心を込めてこの子達に性教育の授業を行なってきました。だからこの子達は、科学的な知識だけにとどまらない、心優しい感性で性を捉え、表現しているのだと感じました。
『おちんちんの話』ぜひ、小学校中・高学年の子に読んであげてください。
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