もの言う技術者たち
「現代技術史研究会」の七十年
もの言う技術者たち
「現代技術史研究会」の七十年
発行日 |
2023年01月発行 |
判型 |
四六判・並製 |
頁数 |
248ページ |
価格 |
本体2200円+税 |
ISBN |
ISBN978-4-8118-0857-4 |
Cコード |
0036 |
大量生産と大量消費につきすすんだ戦後。産業や国家からの要求にこたえ、効率化と「進歩」を追求する技術者は、その負の側面も日々目撃することになる。続発する公害、人間の疎外と管理、経済格差の拡大⋯⋯。経済発展に沸く時代のなか、みずから手がける技術の功罪を問い、「人間のための技術」を論じあう場があった。
専門性や組織の壁を越え、思想の地下茎をつないだ「現代技術史研究会」の実像を、メンバーの歩みとともに語る。
プロローグ 技術者として声をあげる
第1章 公害と対峙する
現代技術史研究会の誕生──星野芳郎
現技史研が本格始動
水俣病を追う技術者──宇井純
水俣病の真相に迫る
「公害原論」から沖縄へ
第2章 真の技術のあり方を求めて
九州で現技史研と出会う──佐伯康治
花形となったプラスチック産業
「公害は技術のゆがみの最大のもの」
ネガティブ・フローシート
大量生産・大量消費を批判
「地味な勉強を」と入会──井上駿
玄人と素人の距離を縮める議論
農業試験場の実態を告発
『日本の技術者』刊行
金属材料の研究者として──井野博満
「合理化の担い手」となる技術者
「技術者の権利宣言」をめぐって
鑑定書の欠陥を統計で暴く
第3章 技術を生かし、社会を支える
「ラジオ少年」から技術者に──松原弘
分業化が進む電算システム開発
ドライバーたちの訴訟を技術で支援
技術者をとりまく環境の変化
技術者の仕事の変容
「インドネシア仕様」のNGO活動家──田中直
講義よりもラグビー
石油会社で直面したコンピューター問題
連続ゼミナールを市民と開く
アジアで出会った資源再生産業
会社員と同時にNGO活動家
ヤシ繊維でつくった排水処理装置
第4章 「人間のための科学技術」をめざす
思想性を大事に──猪平進
IC研究で企業の実力を痛感
現技史研の世代交代
忠誠心で評価される技術者たち
転職した大学にも淘汰の波が
理工学部からジャーナリストに──天笠啓祐
「超低空飛行」の雑誌とともに
問いつづけた『技術と人間』
携帯、スマホを拒絶
技術の全体像と将来図をもちよって
第5章 原子力と向きあう
震災、原発事故への思い
母の足跡をなぞる──坂田雅子
ベトナム帰還兵との暮らし
枯葉剤を追って
ふたたびベトナムへ
核を追い、マーシャルからドイツへ
憧れのエンジニアに──廣瀬峰夫
現技史研に鍛えられる
「ものづくり」の現場で考えつづける
模型少年が技術者に──後藤政志
事故をとおして技術を見る
技術者としての転換期
原発の技術者として
原発銀座を歩く
脱原発を求める僧侶と
「小さな私たち」の「小さな一歩」
あとがき
「現代技術史研究会」関連資料
『技術史研究』創刊の辞/会則/年表
1962年、岩手県生まれ。86年に上智大学文学部英文学科を卒業、共同通信社に入社。水戸、釧路、札幌編集部を経て、国際局海外部、編集局国際情報室で勤務。おもな取材テーマはアイヌ民族、死刑制度、帝銀事件、永山則夫事件、「慰安婦」、LGBTQ、水俣病など。90年代半ば以降は英文記事で発信してきた。94~95年、米コロンビア大学ジャーナリズム・スクール研究員(モービル・フェロー)として、マイノリティ・グループの子どもの教育現場を取材した。著書に『水俣を伝えたジャーナリストたち』(岩波書店)がある。