フリチョフ・ナンセン
極北探検家から「難民の父」へ
フリチョフ・ナンセン
極北探検家から「難民の父」へ
発行日 |
2022年11月発行 |
判型 |
四六判・上製 |
頁数 |
320ページ |
価格 |
本体2400円+税 |
ISBN |
ISBN978-4-8118-0853-6 |
Cコード |
C0023 |
冒険の精神で時代の闇に
道を拓いた巨人
フラム号で極北に挑んだノルウェーの科学者は、やがて
初代「難民高等弁務官」として、闇の中で輝く光となる。
第一次世界大戦後の混乱のなか、42万人超の戦争捕虜を救いだし、
難民・無国籍者のためにナンセン・パスポートを発行。
革命後のロシア=ソ連と他国との関係改善のために奔走し、
ウクライナで飢餓に苦しむ人びとを支援する。
稀代の探検家にしてノーベル平和賞受賞者ナンセンとは、
いったい、いかなる人物だったのか。
未踏の道を歩みつづけたその生涯をひもとく初の和書評伝!
戦争、難民、食糧危機──
いまだ漂流しつづける人類への伝言。
[English]
はしがき
第1章 人生の出航
ノルウェー/ナンセンの母と父/大自然に育まれた少年/人生初の大ジャンプ/ウィンタースポーツの達人/大学へ──動物学を専攻する/ようこそ、氷の世界へ/グリーンランドに心奪われて
第2章 グリーンランド横断
おきて破りの逆ルート/出発と足止め/流氷上の綱渡り/上陸から横断へ──氷床の崖登り/イヌイットと過ごした日々/凱旋帰国/エヴァとの結婚
第3章 前へ! 極北へ
不思議な漂流物/ナンセンの計画──あえて「漂流」する/フラム号誕生から出発まで/氷上の巣ごもり/下船からのアタック/最北の地、さらに1000キロ/思いがけない再会/栄光の帰国
第4章 学者として
内なる主君「無責任」のひらめき/地質学の美/ベルゲンでの第一歩/博士論文「中枢神経系の組織学的要素の構造と組み合わせ」/創始ニューロン説/科学と絵画──観察し、創造する/黎明期の海洋学へ/「洋上の研究室」フラム号/科学器具の発明/エクマンへの継承/学者でありつづけたい
第5章 外交官として
ノルウェー独立に向けて/「進め、前へ! 自由なノルウェーへ」/在英国ノルウェー大使となる/シベリアへの旅/飢餓におびえる中立国ノルウェー/第一次世界大戦/国際連盟──「新しい船」の理想と現実/食糧=武器──米国の思惑/国際連盟とナンセン
第6章 捕虜の帰還
絶望の淵にとり残された人びと/捕虜帰還をはばむ国際情勢/フィリップ・ノエル=ベーカー/国際連盟の決断/クリスチャニアでの会談/ナンセン捕虜帰還高等弁務官の誕生/逆境を越えて/大流に乗る人道支援
第7章 ロシア飢饉
ロシア=ソ連を襲う飢饉と飢餓/マクシム・ゴーリキーからの電報/米国の動き/市民社会組織の動き/ナンセンの決断/「飢饉よりも大きな脅威は共産主義」/数千万人を見殺しにできるのか/民衆に訴える/大流に抗う/老いゆくナンセン
第8章 難民支援
パリのタクシードライバー/国家に「抱かれなかった」人びと/国際難民制度の産声/背に腹はかえられぬ国際協力/ナンセン難民高等弁務官の苦境/難民支援のネットワークづくり/身体、魂、パスポート/ナンセン・パスポートの発明/周到な工夫/難民の範囲を拡げる/雇用・就労という新たな課題/教育の重要性/保護と自主帰還/アルメニア──虐殺と迫害/報われなかった努力への敬意/「難民の父」が去ったあとの世界
第9章 住民交換
ナンセンは正義か?/ギリシャ=トルコ戦争/追いたてられる人びと/90万人の窮状と国際支援/計画の始まり/急かすギリシャ、かわすトルコ/ローザンヌ会議/ギリシャ・トルコ協定の締結/安全と平和の促進か、民族浄化への加担か/ナンセンはなぜ関与したのか
第10章 前へ! 平和へ
ロシア軍による2022年ウクライナ侵攻/『ロシアと平和』を著す/人道支援と国際政治/難民支援の位置/「慈善はレアルポリティーク(現実政治)である」/ノーベル平和賞/ナンセン平和観の両義性──解放か、排除か/ナンセン平和観の普遍性──冒険の精神
第11章 永遠への出航
ナンセン邸・ポルホグダ/私人としてのナンセン/「リベラルアーツ人」ナンセン/生き方の流儀──「知の翼」を拡げて/最後の出航/翼を切りとることなかれ
あとがき
年表・チャート
参考文献・資料
新垣修(あらかきおさむ)
沖縄出身。国際基督教大学(ICU)教養学部教授
PhD in Law (Victoria University of Wellington)
国連難民高等弁務官事務所法務官補、国際協力事業団(現・国際協力機構)ジュニア専門員、ハーバード大学ロースクール客員フェロー、東京大学大学院総合文化研究科客員准教授、広島市立大学教授などを経て現職
主著
『時を漂う感染症──国際法とグローバル・イシューの系譜』慶應義塾大学出版会、単著、2021年
The Oxford Handbook of International Refugee Law (chapter contribution/co-author, Oxford University Press, 2021)
The UNHCR and the Supervision of International Refugee Law (chapter contribution, Cambridge University Press, 2013)
Refugee Law and Practice in Japan(single author, Ashgate Publishing, 2008)