「苦労する当事者」と「無関心なその他おおぜい」という断絶を超える (読者の手紙から)
よくあるハウツー本ではなく、「そもそも介護とは何なのか」というところを掘り下げてあるので、僕みたいに介護についてほとんど知らない者でもスラスラと読み進められました。
介護や福祉のあり方を、おもに制度面から説明するような新書本の類は、本屋へ行けばそれこそ山のように置いてありますよね。新聞でも、介護制度の細かい部分をああだこうだと論じるだけの記事は、結局、数字をめぐる視野の狭い話になってしまい、読者にとってはあまりピンと来ないのではないかと思います。
就職試験で僕は、農業問題で国民の間にある「断絶」を埋めたいということをひたすらアピールしたのですが、介護でも同じ構図かもしれないと感じました。現場で苦労する一部の当事者と、ほとんど無関心なその他おおぜい。結局、介護問題にあるのも、こうした意識の断絶だと思います。
この本では一貫して、現場の人たちの言葉を中心に構成されているのが、とても共感できました。著者の横川さんは、聞き手として話を聞きだし、断絶の先にいる「その他おおぜい」に当事者が語りかけるための「後押し」に徹しているように思います。シンプルだけど重い存在感というか、それが横川作品から一貫して受ける印象です。
自分がその人たちと横川さんのインタビューに立ち会い、彼らの一人ひとりから語りかけられているような気になりました。
それにしても、河田珪子さんはすごい方ですね。もちろんこの本に出てくる方たちの一人ひとりに「ドラマ」を感じだのですが、やはりこの本は河田さん抜きには語れない。感じるものがあった部分は鉛筆で線を引きながら読み進んだのですが、河田さんが話すところには線を引きっぱなしでした。苦悩し、試行錯誤するなかで、本当に多くのことを、深く考えられてきたのだろうと思います。
生意気なことを長々と書いてしまってすみません。
僕の実家では祖母が高齢なので、父、母にも参考になる部分がおおいにあると思います。
面白い本を、ありがとうございました。
(京都・大学4年生、ジャーナリスト志望)
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