教師は二度、教師になる
君が代処分で喪ったもの
教師は二度、教師になる
君が代処分で喪ったもの
発行日 |
2009年11月発行 |
判型 |
四六判・上製 |
頁数 |
240ページ |
価格 |
本体2000円+税 |
ISBN |
ISBN978-4-8118-0733-1 |
Cコード |
C0037 |
子どもとの関わりのなかで、人はいかにして「教師になる」のか。自らの職業倫理に基づいて強制に抗った13人への詳細な聴きとりを通じ、彼らの教育観を伝え、その葛藤のありようを精神医学の視点から読み解く。
はじめに……教師への信頼をとり戻す
▽人はいかにして教師になるのか
教師の成熟のプロセス/何が否定されたのか
Ⅰ 教育観と強制
■「障害」の意味を問う
教師をめざしたきっかけ/障害を抱える子どもたちとの出会い/「障害」の意味に気づく/否定された教育観/身体が座って立てなかった/精神医学の視点から───【堀公博さん】
■「させる」のではなく
教師をめざしたきっかけ/従わせる教育からのスタート/引きだす教育への転換/ある男子生徒との出会い/「立とう」と決心するが/人格が崩れていく恐怖/精神医学の視点から───【大能清子さん】
■歴史に学び、子どもに寄り添う
教師をめざしたきっかけ/地域社会から民主主義を考える/子どもの成長に寄り添う/中国帰国生徒との出会い/老人たちの証言/教師の抗命義務/モノ扱いされた研修/精神医学の視点から───【田村茂さん】
■生徒は見ている
小学校教員からのスタート/一人ひとりと向きあう/抵抗感と自責感/職務命令後の苦しみ/生徒たちの問いかけ/精神医学の視点から───【千葉修さん】
Ⅱ 体育教師たちの想い
■主体的な生き方を願って
教師をめざしたきっかけ/「迫力先生」からの変化/管理と干渉と/苦しい日々から見えてきたもの/不起立のあと/精神医学の視点から───【伊藤悦子さん】
■「性と人権」を伝えながら
都心の学校で「性」を教える/不登校の背景を考えるなかで/自分を、生徒を、偽れない/「それとこれとは話が別だ」/精神医学の視点から───【佐藤忍さん】
■一直線に仕事に生きて
ガキ大将が教師になるまで/激務の教頭時代/降格願いを申し出る/「国旗・国歌」の問題ではない/自分の生き方が否定されたのか/精神医学の視点から───【近藤光男さん】
▽教師が病む学校とは
葛藤のプロセス/増えつづける病休者/投薬治療でうつ状態は改善するか
Ⅲ 生徒と生きる
■ぶつかり、議論し、生徒が決める
教師をめざしたきっかけ/荒れる学校での自治活動/文化祭で生徒の力を引きだす/アジアの歴史を伝える/「不問に付す」/「日の丸・君が代」に対する想い/通達、処分、強制異動/苦しみぬいて起立/採用拒否/精神医学の視点から───【樋口兼久さん】
■生徒が創る「最後の授業」
教師をめざしたきっかけ/生徒が問題を解決する/奪われた手づくりの卒業式/なぜ命令に従わなかったのか/終わらない苦しみ/精神医学の視点から───【横井正さん】
■伝え続けるということ
教師をめざしたきっかけ/定時制の生徒たちと/もの言わぬ職場/国際交流を続けるなかで/伝える自由/内心によって決まる処分とは/捨てられない希望/現場からはずされる恐怖/精神医学の視点から───【佐々木義介さん】
Ⅳ 喪われたものは何か
■生物教師としての三十年
教師をめざしたきっかけ/三十年の教師生活/記憶と結びついた「日の丸・君が代」への想い/権利を守るとは/だれのための儀式なのか/「授業よりも研修」なのか/非情な処分と採用拒否/ただ、ひとりの人間として/精神医学の視点から───【福嶋常光さん】
■「考える社会科」に取り組んで
教師をめざしたきっかけ/考える力を育てる授業/授業への監視/「先生のために我慢して歌います」/精神医学の視点から───【森和彦さん】
■だれが「職の信用」を守るのか
影響を受けたふたりの先生/仕事観の転換/強制によって変わった国旗・国歌観/「職の信用」とは何か/現実感の喪失/精神医学の視点から───【渡辺学さん】
▽君が代処分の教師像
どんな教師が立てなかったのか/君が代症候群
あとがき
年表資料
1944年生まれ。長浜赤十字病院精神科部長などを経て、現在、関西学院大学教授。専攻は比較文化精神医学。1999年2月の広島県立世羅高校・石川敏浩校長の自殺についての検証をきっかけに、君が代強制に苦しむ教師たちの精神医学にかかわる。著書に、『虜囚の記憶』(みすず書房)、『子どもが見ている背中』(岩波書店)、『させられる教育』(同)、『戦争と罪責』(同)、『喪の途上にて』(同、講談社ノンフィクション賞)『コンピュータ新人類の研究』(文藝春秋、大宅壮一ノンフィクション賞)など多数。